荒川 弘は鋼の錬金術師などで知られる有名女性漫画家です。北海道出身で、姉3人、弟1人がおり、デビュー前は、家業の酪農と畑作農業を手伝いながら「エドモンド荒川」のペンネームで『ゲーメスト』内のイラストや『コミックゲーメスト』(共に新声社)の投稿4コマ漫画を手がけていました。また、「ちきんぢょーぢ」のペンネームで光栄(現・コーエーテクモゲームス)から出ていた歴史投稿誌「歴史パラダイス」にもイラストや4コマ漫画等を投稿していました。当時の一部の作品のリメイクは「三国志魂」に掲載されています。
略歴
- 1999年にエニックス21世紀マンガ大賞を受賞してデビュー。衛藤ヒロユキのアシスタントを経て独立。
- 2001年、『月刊少年ガンガン』にて、『鋼の錬金術師』を初連載。大ヒットとなってます。2010年まで連載し完結します。
- 2011年、『週刊少年サンデー』にて、2011年19号より、自身初となる週刊誌連載『銀の匙 Silver Spoon』を連載開始。
- 2013年、『別冊少年マガジン』にて、2013年8月号より、田中芳樹原作のファンタジー小説『アルスラーン戦記』のコミカライズ版を連載開始。
人物
自画像はメガネをかけた牛の姿をしており、実家が酪農を営んでいることと丑年生まれで牡牛座であることに由来としています。実際に牛に関するオブジェや本も多く所有しています。また、ペンネームや作風から男の人と間違われやすいのですが女性です。高校時代は空手を習っていて、黒帯を取得していて、今でも10キログラムのダンベルを片手で持ち上げられるという脅威の筋力を維持しています。
2007年に第一子の男児を出産しましたが、『鋼の錬金術師』連載中は妊娠中・出産後ともに一度も休載することがありませんでした。また、自身の子供について「15歳になったら自分の漫画を読ませて絶対面白いと言わせてやる……」「そうした将来の読者が出来たので戦いがいがある」と対談にて語っています。しかしその一方で、子供の頃から牛の出産を目の当たりにしていたため、自身の出産に関しては「感動なんかよりも出産手順の確認みたいになっていた」とも語っています。その後2011年に第二子を、2014年には第三子を出産しました。
広大な土地(25ヘクタールの畑、本人曰く北海道では小~中規模)と大型農機による酪農と畑作(主にジャガイモ)を手がける農家に生まれ、農業高等学校卒業後7年間家業を手伝っていたことから、北海道の食料自給率の抜きん出た高さと、日本全体としての食糧自給率の低さを対比させた上で、都会人の食糧問題への認識の目に余る身勝手さと農家の実状を描きつつ「飢えたくなければ、銀座でベコ(牛)飼え。ヒルズを耕せ。」と訴える等、漫画家となった現在も一貫した農民視点の人物でもあります。これは『鋼の錬金術師』連載内の4コマ漫画や雑談ページ内でも時折書かれていた。また、実家の大規模農業に従事する際の経緯で、大型特殊自動車の運転免許を取得しています。
受賞歴
- 1999年 第9回エニックス21世紀マンガ大賞(『STRAY DOG』)
- 2004年 第49回小学館漫画賞少年向け部門(『鋼の錬金術師』)
- 2006年 第5回東京アニメアワード原作賞(『鋼の錬金術師』)
- 2011年 第15回手塚治虫文化賞新生賞(『鋼の錬金術師』)
- 2011年 第42回星雲賞コミック部門(『鋼の錬金術師』)
- 2012年 第5回マンガ大賞(『銀の匙 Silver Spoon』)
- 2012年 第58回小学館漫画賞少年向け部門(『銀の匙 Silver Spoon』)
- 2013年 第1回「コンテンツ・アワード・オブ・ジャパン・フード・カルチャー」大賞(『銀の匙 Silver Spoon』)
作品リスト
連載
- 鋼の錬金術師 - 『月刊少年ガンガン』(2001年8月号 - 2010年7月号・10月号)
- 獣神演武 - 『ガンガンパワード』(2007年No.3 - 2009年4月号)、『月刊少年ガンガン』2009年6月号 - 2010年9月号)
- 百姓貴族 - 『ウンポコ』『月刊ウィングス』(2009年9月号 - 連載中) - 酪農体験を題材にしたエッセイ漫画。
- 銀の匙 Silver Spoon - 『週刊少年サンデー』(2011年19号 - 連載中)
- アルスラーン戦記 - 『別冊少年マガジン』(原作:田中芳樹、2013年8月号 - 連載中)
短編・読み切り
- STRAY DOG - 『月刊少年ガンガン』(1999年)
- 突撃となりのエニックス - 『月刊少年ガンガン』(2000年)
- この街の下で - 『東京魔人學園剣風帖短編集 3』(2000年)
- 上海妖魔鬼怪 - 『月刊少年ガンガン』『月刊ガンガンWING』(2000年、2002年、2006年)
- RAIDEN-18 - 『月刊サンデージェネックス』(2005年、2010年)
- 蒼天の蝙蝠 - 『ガンガンカスタム』(2006年)
その他
- 「董卓図鑑」 (1996年、自費出版) - 『三国志』を題材にした同人誌。
- 「EVADX」 (1998年、自費出版) - 『新世紀エヴァンゲリオン』を題材にした同人誌。「ZENKOKUSEIHA」名義での発表。
- ギリシア神話解体新書(1998年、光栄) - ギリシア神話の登場人物について解説した本。一部キャラクターのイラストを担当。
- モリタイシ 『いでじゅう!』 10巻(2004年、小学館) - おまけ漫画。
- 電撃文庫編集部・編 『灼眼のシャナノ全テ』 (2005年) - イラスト、コラム。
- 『創』 2006年6月号(2006年) - 久米田康治と対談。
- テレビアニメ 『さよなら絶望先生』 (2007年) - 第8話エンドカード。
- 宮部みゆき 『ステップファザー・ステップ』 (講談社ペーパーバックスK版、2008年) - カバーイラスト。
- 画集 『藤田和日郎魂』 (2009年、小学館) - メッセージ寄稿。
- 『月刊!スピリッツ』 2009年10月号(2009年、小学館) - ゆうきまさみとの対談。
- イダタツヒコ 『星屑番外地』 (2009年、小学館) - 第1集の帯にイラストとコメントを寄せる。
- サラ・リース・ブレナン 『デーモンズ・レキシコンI魔術師の息子』 (2009年、メディアファクトリー) - カバーイラスト。
- テレビアニメ 『荒川アンダー ザ ブリッジ×2』 (2010年) - 第10話エンドカード。
- 『週刊新マンガ日本史』 No.35 雷電爲右エ門(2011年、朝日新聞出版)
- 石井あゆみ 『信長協奏曲』 4巻(2011年) - 帯イラスト・コメント。
- 『三国志魂(スピリッツ)』 上・下巻(2012年、コーエーテクモゲームス) - 書き下ろし。杜康潤との共著。
- 『境界のRINNE』x『銀の匙』 (週刊少年サンデー、2012年33号) - 高橋留美子と特別対談。
- テレビアニメ 『猫物語(白)』 (2013年) - 第3話協力。
個人的に好きな作品
勿論鋼の錬金術師は言うまでもありませんが、今現在連載中のアルスラーン戦記も非常に面白い作品になっています。これは原作付きの作品なのですが、ハガレンで見せたような独特なギャグが、作品をより魅力的に引き立てています。また全体のストーリーとしても、王道なファンタジーをなぞりながらも、貴種流離譚を逆さまにしたような見せ方をしている作品で、非常にその先が気になってしょうがない作品でもありました。ちなみに貴種流離譚というのは、『高貴の血脈に生まれ、本来ならば王子や王弟などの高い身分にあるべき者が、「忌子として捨てられた双子の弟」「王位継承を望まれない(あるいはできない)王子」などといった不幸の境遇に置かれ、しかし、その恵まれない境遇の中で旅や冒険をしたり巷間で正義を発揮する』という話型を持つもののことを言います。