クリストファー・ノーラン監督による最新映画『インターステラー』も一応農業要素が若干出てきます。メインとなるのはやはり宇宙SF映画となっているので、そちらへの振り幅が大きいですが農業に関しても細かい部分を拾っていて本当に感心させられます。特に地球が滅亡の危機に瀕してしまう理由の一つに全世界規模の砂嵐による食料生産事業の壊滅があるのですが、これは1930年代にアメリカで同様のことが起こっており、昼間にもかかわらず黒い吹雪のせいでまるで夜のように真っ暗になってしまっていたという話があります。これをダストボウルと言い、無計画な耕作地の開梱と、その後事業の失敗による耕作地放棄が断続して起こり、その耕作放棄地が完走したことによって、砂嵐の発生源となったと言われております。そんなダストボウルの描写から、宇宙の描写に至るまで一つ一つが非常にこだわられて作られた現代版2001年宇宙の旅とも言える映画が、このインターステラ―なのです。
出演はマシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ケインら。前述したダストボウルによって食料や色々な物がダメになってしまったことによって、新たな居住可能惑星を探すためにワームホールを通って旅をする宇宙飛行士のチームが描かれています。脚本はジョナサン・ノーランとクリストファー・ノーランが執筆していて、2007年にジョナサンがパラマウント映画とリンダ・オブストの下で開発したスクリプトにクリストファーのアイデアが合わせられています。脚本に関しては書き終わるまでに4年近くかかっており、何故そんなに年数がかかったかと言うと、実際の科学に則した内容にするために、わざわざNASAの研究チームを調査したり、カリフォルニア工科大学で相対性理論を学んだりしていたからだそうです。実際の製作にはクリストファー・ノーラン、オブストの他に彼の妻のエマ・トーマスが参加し、また理論物理学者のキップ・ソーンが科学コンサルタント兼製作総指揮を務めています。
出資はワーナー・ブラザーズ、パラマウント映画、レジェンダリー・ピクチャーズが行い、シンコピー・フィルムズとリンダ・オブスト・プロダクションズが製作しています。撮影監督にはホイテ・ヴァン・ホイテマが雇われていて、アナモフィック(英語版)35mmとIMAX70mmフィルムが使われた。撮影は2013年後半よりカナダのアルバータ州、アイスランド、ロサンゼルスで行われ、視覚効果はダブル・ネガティブが作り上げました。
プレミア上映は2014年10月26日にロサンゼルスで行われ、11月より全世界で公開が始まった。北アメリカではデジタル上映の前にまだフィルムを利用している映画館で限定公開されました。興行的に成功を収め、また批評家からは科学考証の正確さ、視覚効果、マコノヒー、チャステイン、フォイの演技が高評価されました。
ストーリー
近未来。地球規模の植物の枯死、異常気象により、人類は滅亡の危機に立たされていた。元宇宙飛行士クーパーは、義父と15歳の息子トム、10歳の娘マーフと同じくトウモロコシ農場を営んでいる。マーフは自分の部屋の本棚から本がひとりでに落ちる現象を幽霊のせいだと信じていたが、ある時クーパーはそれが何者かによる重力波を使った二進数のメッセージではないかと気が付く。クーパーとマーフはメッセージを解読し、それが指し示している秘密施設にたどり着きますが、最高機密に触れたとして身柄を拘束されます。
そこでクーパーはかつての仕事仲間のブランド教授と再会し、大昔に無くなったNASAが秘密裡に復帰し活躍を続けていることを知らされます。NASAは土星近傍のワームホールを通り抜けて、別の銀河に人類の新天地を求めるプロジェクト――ラザロ計画を遂行していたのでした。48年前に”彼ら”によって創造されたと考えられているワームホールを通過し、すでに三名の先駆者達が、入植が期待できる惑星から信号を送り返しています。教授は、第二の地球となって得る惑星を探すミッションにパイロットとして参加するようクーパーを説得します。帰還できたとしてもそれがいつなのか不明なミッションに、マーフは激しく反対します。二人は和解のチャンスを得られないまま、クーパーは出発の日を迎えてしまう。クーパーはマーフに「必ず戻ってくる」とだけ言い残し、ブランド博士の娘のアメリアらと同じく宇宙船エンデュランスに搭乗し地球を後にします。
二年後、クーパー、アメリア、ロミリー、ドイルの四名と人工知能ロボットTARSとCASEの二体を乗せて、エンデュランスは土星近傍のワームホールに接近します。エンデュランスはワームホールを通り抜け、ラザロ計画の先駆者の一人――ミラー飛行士が待つ水の惑星を目指します。水の惑星は超大質量ブラックホールガルガンチュアのまわりを公転しています。物理学者のロミリーは、ガルガンチュアの超重力が時間の流れを歪めていて、水の惑星での一時間は地球の七年間に相当すると警告します。クーパーは地球に残してきた家族を想い、水の惑星への接近を躊躇しますが、他の飛行士らに公私の混同をたしなめられ、着陸は決行されることとなってしまいます。地質学者のドイル、アメリア、クーパー、CASEは小型シャトルレインジャーで水の惑星に降り立ち、アメリアは、惑星の表面を捜索しますが、ミラー飛行士は見つからず、彼女の着陸船の残骸だけが見つかりました。間もなく山脈と見まごうほどの巨大な波が一行を襲い、逃げ遅れたドイルは死亡し、レインジャーのエンジンが故障します。アメリアは、ミラー飛行士がこの惑星に到着したのは数時間前、死んだのは数分前に違いないと話す。数十分後、エンジンが回復し、クーパーらはエンデュランスに帰還しますが、そこでは23年あまりが経過しており、エンデュランスでクーパーらの帰りを待っていたロミリーはすでに壮年に差しかかっていたのでした。
映画の見所
ノーラン監督の映画の魅力というと嘘のものが極限まで無いということが上げられます。病院が爆発するシーンがあればCGを使わずに実際に病院を一棟爆発させて壊しますし、今回のダストボウルに関しても実際にとうもろこしを500エーカーにも渡り植えて、実際にとうもろこし畑を要した後に巨大な扇風機を設置し、セルロース系の合成チリを用いて実際に砂嵐を起こし撮影しています。また、極限までコンピュータ生成によるイメージを抑えるためにスペースシャトルのセットを実際に建築士、船外撮影の為のミニチュアまで作ったそうです。
またワームホールの描写に関して、相対性理論を可能な限り正確にするために理論物理学者のキップ・ソーンが科学コンサルタントを務め、アインシュタインの一般相対性理論に基づいた厳密なワームホールとブラックホールが描写されておりました。