菌を肉眼で見ることが出来るという特集能力を持つ沢木という主人公を中心に、菌やウイルスに関わる農業生活の学園生活を描いたのがこのもやしもんというマンガです。講談社の青年漫画誌であるイブニングにて連載後、月刊モーニングtwoへ移籍して連載が続けられておりました。「かもしちゃうぞ」「かもすぞ」といった菌達の独特なしゃべりなどといった魅力がある一方、お酒のことや農業のこと、そして菌が我々の生活の中でどのように役に立っているのかという事に関してとても高いレベルでわかりやすく掘り下げてあるので、なんの前知識が無い人が読んでも楽しめるし、感心させられるマンガになっております。また、ラブコメ作品としても楽しめる要素があり、ただたんに真面目に知識だけを紹介していく作品ではありません。また本作は非常に人気を博したことから、2007年10月から12月までフジテレビのノイタミナ枠にてテレビアニメが放送されました。2010年には実写ドラマ化もされていて、同年7月から9月まで、テレビアニメと同じくノイタミナ枠で放送されておりました。更に2012年7月から9月まで『もやしもん リターンズ』がアニメの続編として放送されました。
作品解説
作者の説明によると「農大で菌とウイルスとすこしばかりの人間が右往左往する物語」であります。
東京にあるとされる「某農業大学」(名前を伏せているわけではなく、これが正式名称)に入学した、「菌」の存在を肉眼で視認できるという不思議な能力をもつ主人公・沢木惣右衛門直保をめぐる学園ドラマであります。第5巻収録の第49話冒頭では、「ミニマムな団体劇」とも表現されています。直保に見える菌は、デフォルメされたキャラクターとして描かれています。作中で菌たちがたびたび発する、「繁殖する」「発酵、腐敗させる」ことを意味するセリフ「かもす」(醸す)は、作品のシンボル的フレーズとなっています。また主に登場する菌類がデザインされた、Tシャツやぬいぐるみ、フィギュア等のグッズも発売されています。
タイトルの推移と備考
連載時のタイトルは、第1話が「農大物語」であり、第2話が「農大物語 もやしもん」、第3話は「農大物語改め もやしもん」、第4話は「新タイトル覚えてくれた? もやしもん」、今のロゴデザインになったのは、第5話「ロゴデザイン変えてみました。(農)もやしもん」からです。なお、単行本表紙のロゴデザインは統一されていません。作中に入る脚注は、基本的に「菌」に関する記述は作者、それ以外は「担当さん」(=担当編集者)が担当しています。単行本では脚注のほか、扉ページのアオリや毎回の登場人物紹介欄も、雑誌掲載時と同様の形で収録するという珍しい形が取られています。
受賞
第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞
第32回講談社漫画賞一般部門
平成20年度醤油文化賞
ストーリー
種麹屋の次男坊である沢木 惣右衛門 直保(さわき そうえもん ただやす)は、菌やウィルスを視認し会話ができるという不思議な能力を持っていました。直保は幼馴染の結城蛍と同じく、祖父の友人である樹慶蔵が教授を務める「某農業大学」へと入学します。院生の長谷川遥とゼミ生の武藤葵、密造酒の製造に失敗して多額の借金を背負うことになった2年の美里薫と川浜拓馬、偶然ゼミに参加することになった1年の及川葉月を加えた面々は、菌とウィルスに纏わる様々な騒動に巻き込まれてゆく。
沢木 惣右衛門 直保(さわき そうえもん ただやす)
本作の主人公。農学部1年です。「もやし屋」こと種麹屋の次男坊。「惣右衛門」は実家の屋号で、普段は「沢木 直保(さわき ただやす)」と屋号を省略しています。菌やウィルスが肉眼で見え、指で掴んだり会話したりすることも出来るという不思議な能力を持っているのですが、周囲の人々には信じてもらえず、幼い頃から変わり者扱いを受けることから、他人と距離をおいてきたためコミュニケーション能力は高くありません。背が低めことがコンプレックスになっていて、身長は自称160センチですが、そんなにない事は公然の秘密であります。
結城 蛍(ゆうき けい)
「某農大」農学部1年です。沢木の幼馴染であり彼の能力の理解者。中性的な顔立ちの人物ですが、れっきとした男の子。武藤は「女の子みたいな子」と指摘したことがありますが、沢木によるとどうやらそれは禁句のようです。実家は造り酒屋で日本酒についてかなり詳しく、火落ち菌が要因で実家の杜氏が自殺してしまったのを目の当たりにしたことから、火落ち菌を非常に憎んでいます。第14話で休学すると宣言し、第15話を最後に連載1年近く登場しなかったが、第37話で黒いゴシックロリータ調の女装で再登場します。現在、日吉酒店預かりの立場で理想の酒販形態について思索中。醗酵蔵のメンバーからは沢木の「彼女」とされていて、本人は意識していないがマリーの存在を仄めかされて殴りつけたり、言葉遣いが沢木にだけ違ったりと行動として表れていますが、本人は同性愛については完全に否定しています。また、性同一性障害ではないかという話も出ていたが今のところ有耶無耶になっています。
樹 慶蔵(いつき けいぞう)
「某農大」の老教授で、沢木の祖父の古い友人。菌によるテラフォーミングの思想を支持しています。あまねく場面で持論を語り始めるが、話が非常に長いため、沢木達は語りが終わるまで距離を置いて避難しています。研究者としての立場から非情ともとれる発言をすることもある一方で、研究のモットーとした実学として美里と川浜が口噛み酒を作ったことに感銘を受け借金をチャラにする等愛嬌のある行動もあります。
また、私生活はミステリアスで、実年すら明かされていません。戦時中、航空燃料に関しての研究にあたっていました。政財界に太いパイプがあるようで、「夜の日吉酒場」を通じて策謀を巡らす事もあります。顔が広く、色々な人に支持されていますが、長谷川の父とUFO研の学生、UFO研の蒼井が所属するゼミの教授にはよく思われていません。
長谷川 遥(はせがわ はるか)
「某農大」大学院生。妖艶な美貌を持つが、しかめっ面で暴力的、時に鞭を振り回すドSの女王様気質で知られます。私服もボンデージテイストで、部屋着やスポーツウェアまでタイトなものが多いです。アルコールにはあまり強くなく、「リミット」と呼称される量を超えるアルコールを摂取して酔うと、猟奇的な台詞を口走りながら周囲の人間に暴力的に絡む特殊な酒癖が現れ、絡まれた人間に恐怖を与えるシーンが何度かありました。当の本人は「甘え癖」と主張しますが、被害者はそうは思っていません。しかし、頼まれたら断れない性格でもあります。
美里 薫(みさと かおる)
農学部2年です。発酵蔵メンバーの中で唯一の喫煙者。自称「口噛み酒の伝承者」。川浜とは学内の自治学生寮のルームメイトでコンビで扱われることが多くて、学内で日本酒の密造(ヒオチ菌によって腐敗してしまったが)を行ったりする等ちゃらんぽらんな性格ですが、一時的に能力を喪失した沢木を川浜と同じく長谷川らから庇ったり、婚前旅行と称してフランスに拉致された長谷川と2人で(愛の?)逃避行を行い、一時的に長谷川と心を通わせるハートフルなエピソードが描かれました。
お笑いコンビの笑い飯の西田幸治に似ていて、作中でもネタにしていて、ドラマ版では実際に西田が演じています。長らく西田とは無関係であるというスタンスを作者はとっていたが、2010年8月20日にワニブックスから発売された「笑い飯全一冊」に掲載した漫画(10巻のオマケでも掲載)にてついに西田をモデルに描いた事を打ち明けています。
川浜 拓馬(かわはま たくま)
農学部2年です。丸顔と小太りな体型でルーズな性格をしています。虫に関しては異様な熱意を燃やし、美里の作った口噛み酒にゴキブリの卵鞘を勝手に足したり、蛆虫入りチーズを披露した事もありました。メキシコからの帰国子女ですので、日本語のほかに英語・スペイン語を話すことができるトライリンガル。三つ子兄弟の長男なのだが他の2人は「カルロス」と「ホセ」という何故かメキシコ風の名前で、体格等も日本人とは多少違っています。兄弟の絆は強くかなり慕われています。
美里と共に金儲けをよく企むが、金儲けの方法の相違で美里と度々衝突する事があります。
能力を一時的に喪失した沢木を長谷川から庇い、美里と一緒に男気を見せファンレターが増えたというエピソードもあるのですが、極度の虫好きが前に出すぎて損をしている感は否めません。
及川 葉月(おいかわ はづき)
農学部1年です。沢木と同じクラスに所属しています。ただの通りすがりだったところを樹に捕まりバイクに乗せて登場し、更に頼まれてホンオフェを抱えて研究室に顔を出します。そしてその後の騒動に巻き込まれ、以後樹研究室に居つく事になります。除菌マニアの潔癖症で、顔面寄生虫の存在を知った直後には自らの顔に除菌スプレーを噴射したり、電車のつり革につかまるのを嫌がったり、抗菌グッズをたくさん持っていたりしますが、発酵蔵に関わっているうちに緩んできています。また、不潔に耐えるほど長谷川の服を着るのを恥ずかしがっていたが、フランスへの資金繰りの為にハイレグを着用しバニーガールになったり、ミス農大落としで露出度の高い水着姿を披露する等気にしなくなった。
武藤 葵(むとう あおい)
農学部3年です。樹研究室の唯一のゼミ生。1年生のときにミス農大に選ばれ、3年生の冬までミス農大の地位にいたほどの美人ですが、本人はそのことに至って無頓着。干物女だが型書きを気にする性格。長谷川に地球の裏側に置いていかれ、各地の発酵食品を収集しながら、陸路から自力で帰国させられたことを始め、いじられ役や汚れ役を引き受けることが多いです。発酵蔵メンバーでの酒豪ナンバーワンだが酒乱癖があって、酔うと何をしだすか言い出すかわかりません。
A.オリゼー(Aspergillus oryzae)
ニホンコウジカビ。沢木が幼少の頃から実家の蔵で一緒に遊んでいて、いつも沢木の肩や頭に乗っかっている、菌側の主役的存在。沢木に助言やアドバイスをすることもあります。大体の事は自分で出来ると思っているらしい。合体して巨大化することも。デンプンを糖に分解し、S.セレビシエとの共同作業である並行複発酵により日本酒を作り出します。温暖な気候を好みます。
A.ソーエ(Aspergillus sojae)
ショウユコウジカビ。高濃度の塩分にも強く、醤油や味噌をかもす。また、事実上自然界には分布せず、種麹屋をはじめ醤油工場等限られた場所にしか存在しないため、ソーエは醤油製造の歴史の中で進化してきた種類のコウジカビだと推測されています。